米CPIは高止まり。
米国労働省は、7月13日に消費者物価指数CPI(6月)を発表した。総合CPIは前年同月比で9.1%上昇となり、1981年以来の高い伸びを示した。5月は同8.6%上昇だった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIでも前年同月比5.9%上昇した。5月のコアCPIは同6%上昇だったので、ほぼ横ばいだったことになる。
今回の統計から読み取れることは、6月も生活必需品の価格が全般に大幅な伸びを示していることである。ガソリン価格は前月比で11.2%上昇、電力やガスなどエネルギー価格は同3.5%上昇で、いずれも過去15年間で最大の上昇となった。食品価格もわずか1か月で1%上昇し、前年同月比で見ると10.4%上昇と、1981年以来の大きな伸びとなった。家賃も上昇を続け、前月比で0.8%上昇した。住居費では同0.6%上昇した。住居費は、CPI全体の約3分の1を占めるがこのインパクトは大きい。新車価格は前月比0.7%、中古車価格は同1.6%とそれぞれ高い伸びを示した。今回の統計は、物価の上昇圧力が引き続き強く、米国経済のあらゆる領域に影響が拡大していることを示した。
実質賃金も目減り続く
もう一つ、注目しておきたいデータは実質平均時給で、6月は前年同月比3.6%減と、リーマンショック以降で最大の下落となった。実質賃金の下落は、6月で15カ月連続となった。物価の上昇に賃金の上昇が追いかないため、実質賃金は下落を続けており、購買力や消費者信頼感を損ない始めている。買い控えによって、売り上げにも今後影響が出てくることは避けられないだろう。
政治的にも、有効な物価対策・インフレ対策を打っていないとして、売電政権への不満にもつながりやすい。11月に実施される中間選挙を控えて、支持率が低迷しているバイデン政権や議会民主党にも、政策発動に向けて圧力が強まる。バイデン政権は厄介なことになったと、頭を抱えているのではないか。バイデン大統領は、6月CPIについて、発表から1時間後に声明を発表した。CPIは「容認し難いほど高い」としつつも、6月のデータは「古い」情報で、6月半ば以降米国ではガソリン価格が約40セント下落しており、データが誇張されていると語った。このガソリンの値下がりで、家計には一息つく余裕が生まれていると火消しに躍起のようである。ただ、現実は厳しい。7月の全米ガソリン平均価格は6月平均との比較で約12%下がっているが、前年比では47%超も上昇している。
CPIがピークを打ったとは到底言えない。エネルギーや食糧だけの問題ではなく、経済の様々なところに波及していく現象が起こっていることは大問題である。7月FOMCでの判断が注目される。
カナダ中銀は1.00%の大幅利上げ。米FRBも追随するとの観測。
13日には、カナダ銀行(中央銀行)が、政策金利である翌日物金利を1.00%引き上げて、2.50%とすることを決定した。加中銀としては、1998年以来24年ぶりの大幅な利上げ実施である。マックレム・カナダ銀行総裁は、利上げ発表後の記者会見で、1.00%幅での利上げを、「前倒しで利上げを実施することで、将来より高い水準に金利を引き上げる必要性を回避することを目指した」と説明した。高まるインフレ圧力に、金融政策を緩和的なまま放置することはできないということである。同様のことをFRBが検討する可能性はあり、米国市場では、7月FOMC会合で、1.00%幅での利上げさえ織り込み始めた。
株式相場は大幅利上げ観測の強まりとリセッション懸念から軟調な展開で続落、S&P500指数は、前日比0.67%下げた。為替相場では、ドルが一段と上昇し、ユーロは対ドルで一時パリティ(1ユーロ=1ドル)の等価を割り込んだ。ドル円は、このところの最高値を更新、137円70銭程度まで上昇する局面があった。ドル高の流れは変わらないだろう。米国債は中短期債利回りが上昇し2年米国債利回りは3.20%へと上昇した。一方で長期債利回りは低下し、10年米国債債利回りは2.95%へと低下、逆イールド化が鮮明となった。