6月FOMC議事要旨公表 ~ インフレ継続なら「より抑制的」な金利も
‘More Restrictive’ Rates Possible If Inflation Persists
6月14~15日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表された。
それによると、委員会は、インフレ率が高止まりしないよう、経済成長の減速を伴ったとしても、政策金利をより長期にわたって引き上げ続ける必要性があり得るとの認識で一致した。更に、米国での物価上昇圧力が続いた場合には、「より抑制的な」措置、すなわち幅を伴った金利の引き上げを講じる可能性があると見ていることが示された。また、次回7月26~27日の会合では、政策金利を0.50%ないし0.75%引き上げることを支持していたことが記されていた。
インフレへの対決姿勢が目立った一方で、リセッションへの懸念は言及されなかった。今回の議事要旨では、「インフレ」という単語の言及が90回程度あったのに対し、「リセッション」という単語は全く出てこなかった。金融政策で引き締めを強化することは経済成長ペースを一時的に減速させ得るが、FOMCでは、雇用の最大化し、持続可能なベースで成長させるにはインフレ率を2.0%へ回帰させることが極めて重要であるとの見解を表明し、インフレの抑制へのコミットメントを優先することを確認した。金融市場では、高水準にあるインフレの抑制に向けた大幅な金融引き締めにより、米国経済はリセッションに陥るとの懸念が高まっていることとは対象的である。
加えて、FOMCが直面するリスクは、FOMCが必要に応じて金融政策スタンスを調整するという役割を果たさないのではないかとの疑問が米国民の間に広がり始めることであるとした。その場合には、期待インフレ率を制御できなくなり、高インフレが定着しかねず、この状態からインフレ率をFOMCが目標とする2.0%の範囲内に収斂させるには、より多くの代償が必要になる危険性を指摘した。インフレファイターとしてFOMCが市場からの信認を維持することは極めて重要だと考えているのである。
FOMC議事録の公表を受けて米国債の売り圧力が高まった。インフレ率高止まりが定着することを阻止するために当局が積極的な引き締めを行う姿勢が明確になったことから、7月に入って急低下していた米国債利回りは反転上昇した。FRBの金融政策スタンスに敏感に反応する2~3年米国債利回りは、前日比で0.18%上昇し3.00%を超えた。長期金利の指標である10年米国債利回りは0.12%上昇して2.93%をつけた。
金融市場とFOMCの認識には、ギャップが認められる。金利の上昇は、たしかに景気のブレーキとなり、リセッションへの可能性を高めるが、必ずしも、リセッションが不可避というわけでもない。やや先走った市場のリセッション懸念は、2022年の急速で大幅な利上げと2023年後半での利下げシナリオさえ描いているが、そのシナリオの妥当性はまだ誰にも判断できないものとしかいいようがない。むしろ、雇用市場の堅調ぶりが際立てば、リセッションシナリオが後退することも十分考えられる。今週8日に公表される6月の米国雇用統計が注目される。
Minutes of FOMC
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