底入れの兆しは見えず
暗号通貨に投資家が戻ってくるかどうかが注目されているが、どうやら、その期待は、まだ早すぎたようである。先週は、複数のビットコイン先物上場投資信託(ETF)の運用資産が増加したことが一部で好感された。ETFには、機関投資家の資金も再流入しており、彼らが相場に戻り始めたと受け止める見方が出ていた。
足の早い一部の投資家が、主要暗号通貨の底打ちに賭け始めたと見受けられるが、流入する量としてはまだ、本格的なものではないだろう。暗号通貨は、長期的に成長の潜在性を秘めた投資対象と見るなら、買い始めるのも一考に値するが、リスク資産の混乱が落ち着くのはもう少し先ではないか?このところの、リスク資産に対する市場の厳しい見方や売り浴びせ方からは、暗号通貨への強気の見方は後退していると考える。
加えて、いくつかのテクニカルな問題も、暗号通貨に対する心象を悪くしている。今回の暗号通貨相場混乱の引き金となった、テラUSDのペッグ制崩壊はステーブルコインへの信頼を損ねた。
そして、6月13日には、暗号通貨の貸し付けを手掛けるセルシウス・ネットワークが自社プラットフォーム上での暗号通貨の引き出しや送金を一時停止すると発表した。セルシウスは、毎週最大30%のリターンを含む金融リワードを掲げていたが、その持続可能性を疑問視する見方が広がった。
ビットコインは先週末の取引でも27,000前半まで売り浴びせられたが、13日のアジア時間の取引だけで、前日比9%程度下落し23,900ドルまで値を下げた。2020年12月以来の安値水準である。イーサも週末の1,400台半ばの取引から、更に1,200台前半まで売り込まれた。ロイターの報道によると、コインマーケットキャップが算出する、暗号通貨市場の時価総額は、9,260億ドルとなり、1兆ドルを下回った。
世界的な金融政策引き締めの流れの中で、リスク資産への需要が後退し、デジタル資産全体に影響が及んでいる。暗号通貨の中でも、より規模の小さいプラットフォームには、その存続に懐疑的な見方さえ広がっている。悪いスパイラルは、簡単には流れを断ち切れそうにない。ボラティリティの高い不安定な相場が続くだろう。