6月10日に米国では、もう一つ重要な経済指標が発表された。ミシガン大学が調査する消費者マインド指数(6月速報値)である。同指数は50.2で、前月の58.4から低下し、過去最低水準に落ち込んだ。インフレ高進が続き、実質賃金は低下、家計への打撃となっていることが背景にある。現況指数は55.4で前月の63.3から大幅に低下し、この統計が開始されて以来の最低となった。期待指数も46.8と前月の55.2から大きく下げた。
インフレ期待も上昇しており、回答者の46%が悲観的になる理由として根強い物価圧力を挙げた。所得がインフレ率を上回って増加すると期待する比率はわずか13%に低下し、約10年ぶりの低水準である。
個人消費はこれまでのところ堅調を維持しているが、実質所得の目減りにより、消費者のセンチメントは悪化している。今後、消費の減少とそれによる米国経済の減速に陥る可能性があり、注意が必要だろう。残念ながら、インフレ率がすぐに低下する見通しはない。
インフレに関連して、筆者がもうひとつ懸念することは、インフレ対策の政治問題化である。バイデン大統領は10日のCPI公表後、声明を発表し、「今回のCPI統計はインフレ対策を最優先する経済政策課題としてきた理由を鮮明にする」とコメントし、米国議会に対して、エネルギーや処方薬、輸送のコストを低減する法案の早期可決を呼び掛けた。米国では11月に中間選挙が控える。民主党の苦戦は織り込み済みだが、大きく議席を落とせば、議会対策が非常に大変になることは目に見えており、インフレの政治問題化は、中立の立場であるはずのFRBにとっても厄介な問題になるだろう。また、昨年インフレは一時的な現象と判断していたことをイエレン財務長官が間違いと認めたことに関連して、当局者の予測の過ちを調査するべきとの意見も出ており、今後、批判の論調が強まるかもしれない。
なお、CPIが高どまっていることで、今週のFOMCでは、0.75%が検討されるとの声も、市場の一部では出ていたようである。FOMCは14~15日に開催される。