ブラックスワンという言葉を聞いたことはありますか?
英語で『スワン』は白鳥を意味します。『ブラックスワン』を直訳すると「黒い白鳥」ということになります。おかしいですよね?矛盾しています。
実は、白鳥にそっくりの黒い水鳥は、実際に存在しています。日本名では『コクチョウ』です。白鳥(コハクチョウ)と同じくらいの大きさで、嘴が赤いことが特徴ですが、姿形は白鳥に似た黒い水鳥です。
発見されたのは、オーストラリアで、当時は、そんな水鳥の存在は信じられないと生物学者はとても驚いたそうです。北半球では、滅多に見ることはありませんが、地球上に全く存在しない水鳥ではありません。『ブラックスワン』が発見されたときの衝撃がとてつもないものだったことから転じて、相場の世界では、とても信じられないことや予期しなかったことが起こって相場が急変した時に、『ブラックスワン』という言葉を使います。
金融市場では、パンデミック以降、主要中央銀行が金融緩和を実施して、資金がばらまかれ、流動性が急増しました。しかし、インフレ率が上昇し始め、ついに米FRBが金融政策を転換、利上げを実施して、流動性も吸収しはじめました。これに欧州中銀や他の主要中銀も追随する構えで、経済環境は変化しています。
そのため、このところ、米国経済も来年にはリセッションに突入するとか、新興国経済にもその影響が飛び火するとか、過剰流動性が一気に失われる過程で「人類史最悪のクレジットバブル崩壊」が起こるなど、予想しなかった『ブラックスワン』級のイベントが発生するのではないかとの予想が飛び交い始めました。
ただ、予期できていることは、『ブラックスワン』とは言えません。案外、経済の足腰は強いという話も出ています。あるいは、久しぶりにやってきたインフレの波が、実はとっても大きく影響するとか、それ以外のショッキングな出来事が起こるのかもしれません。
いずれにしても、市場の予見可能性が下がるのは厄介なことです。2023年にかけても、そうした不透明感は続き、目に見えぬ『ブラックスワン』は市場を脅かすと思われます。