後手に回る政策に懸念広がるか?
5月11日に米国労働省統計局が発表した消費者物価指数CPI(4月)は、前年同月比8.3%上昇だった。前月比では0.3%上昇した。3月CPIも前年同月比で8.5%上昇と上方改定され、インフレが高止まりした状態でさらに長期化することが懸念される統計である。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも前年同月比で6.2%上昇、前月は同6.5%上昇だった。食品は前月比で0.9%上昇、前年同月比では9.4%上昇と、1981年以来の大幅な伸びだった。エネルギー価格は、ガソリン価格が前月比で6.1%低下したことから低下したものの、原油価格は高値で推移しており、ウクライナでの戦闘の長期化により過去最高水準を維持する見込みが高いだろう。
4月CPIの特徴としては、物品・商品の価格上昇率は前月比で鈍化したものの、サービス価格は2001年以来の大幅な伸びを示しており、消費が旅行や外食などにシフトすることを勘案するとインフレ率の下落が顕著になると期待することは難しいだろう。財分野の行き過ぎた需要は落ち着きが見え始めているものの、サービス分野でインフレが進行しており、コアインフレ率は高止まりする可能性が高い。
インフレ率上昇は、ピークをつけた可能性はあるが、4月のCPI統計からは、価格高騰の波は広範囲に波及しており、賃金の堅調な伸びとともにインフレ率が高止まることを示唆している。インフレ率は8%程度の水準で横ばいになり、低下には相応に時間を要する可能性がある。
CPIの上昇により、インフレ調整後の実質平均時給はむしろ減少している。前年同月比で2.6%減少となり、これで13カ月連続のマイナスとなった。賃金も名目上は伸びているが、インフレ率の上昇幅には追いついておらず、実質賃金はマイナスになっている。物価を早期に落ち着かせることが重要であることがわかるが、これは、裏返せば米FRBによる利上げ実施の遅れが、インフレを根付かせる要因の一つになったとも読める。高止まりするインフレ率を前に、より早く大幅に利上げをすべきとの議論に繋がる可能性に注意したい。
実際に、ボスティック・アトランタ連銀総裁は、インフレが高止まりした場合、経済成長を抑制する水準にまで政策金利を引き上げることを支持する考えを示した。米国債市場では、短期債の利回りが上昇し、10年米国債の利回りはCPI発表前から0.06%低下して、2.93%に下げた。株価はネガティブに反応し、S&P500指数は引け前に下げ幅を拡大し、前日比1.65%安の3,935.18で引け、2021年3月以来の安値をつけた。ナスダック総合指数は前日比3%を超える下げで11,364.23で引けた。大型ハイテク株で構成されるナスダック100指数も前日比3.1%下落した。引き続き株価のダウンサイドには注意しておきたい。