米FOMCで政策金利0.50%の利上げを決定


5月4日、米FRBは連邦公開市場委員会 (FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0.50%引き上げることを全会一致で決定した。2000年以来となる0.50%幅の利上げで同金利の誘導目標レンジは0.75~1.00%となる。
また、FRBが購入してきた米国債と住宅ローン担保証券を減らしていくことも決定された。FRBのバランスシートには、8.9兆ドルの残高があるが、これを6月から月475億ドル、今年9月以降は月950億ドルずつの規模で縮小する。

パウエル議長は、「足元のインフレの水準はずいぶんと高過ぎる。それがもたらしている困難をわれわれは理解しており、インフレを押し下げるべく迅速に行動している」と説明、インフレ抑制を目的に、次の2回のFOMC会合でも、0.50%幅での利上げを継続し、積極的な引き締め策を講じることを示唆した。一方で、さらに大幅な0.75ポイントの利上げについては、「FOMCは積極的に検討していない」と語り、市場にくすぶっていた0.75%幅での利上げ観測を否定した。不確実な観測が拡大し、市場が不安定になることを回避する意図があるのだろう。実際に、この点を評価して米国株式相場は反騰した。

しかし、パウエル議長は会見で、金利を抑制的な水準にする必要があるとFOMCが、いずれ判断することは「確実にあり得る」と述べ、「より高い金利が必要になった場合は、躊躇せずに利上げを実施する」ことを言明したことにも注目しておく必要がある。米国経済を加速も減速もさせない「中立」の水準は2.5%程度と考えられる。最近も、FOMC委員の一部からは、年末までにフェデラルファンド金利を迅速に、この2.5%水準にすることを支持することを表明する声が出ている。フェデラルファンド金利先物12月限のインプライドレートは2.60%水準にあり、0.50%の利上げが年内に3回実施されることを市場は織り込んでいるといえる。ただ、現時点ではまだ金利は十分に引き上げられていないわけで、インフレを抑制できない状態が続き、利上げのペースを急ぐ、または結果的に2.50%水準を超えて利上げすることを迫られる可能性は残る。FOMCやパウエル議長の示すシナリオは、あくまで数多くのシナリオの一つと受け止めるべきだろう。

なお、イエレン財務長官は、為替相場で主要通貨に対して米ドルの価値がこのところ上昇を続けていることに関して、特段懸念していないと表明した。イエレン長官は、「市場原理に基づくドルの価値を信頼」しており、米FRBが利上げ姿勢に変じた結果として、相対的に利回りが高い米国証券への投資を引きつけていることが自然の流れであると語った。一部にあった、為替介入のカードはないと見るべきだろう。