協調介入は想定できず。日銀は金融緩和姿勢を鮮明に。
<日銀は金融緩和姿勢を維持。鮮明に。>
日本銀行は28日、金融政策決定会合を開催し、長期金利のフォワードガイダンスを変更せず、むしろ、債券買い入れの指し値オペレーションを「必要なら毎日」やるとの運用を明確化することを決定した。黒田総裁は会合後に記者会見で、オペの有無から政策を探ろうとする市場の「臆測を払しょくするため」の運用明確化であることを説明した。これにより10年日本国債の利回りは上限0.25%でキャップされることになる。
また、黒田総裁は、日本の経済状況や物価情勢は、金融政策の正常化を進める状況にはなく、「緩和を粘り強く続ける」との見解を従来通り繰り返した。さらに、必要であれば「躊躇なく追加緩和をする」とまで言い切った。消費者物価(コアCPI)については、今年度には2%程度まで上昇すると予想しているが、これは「持続性に乏しい」一時的なものにとどまるとの見方を示した。
黒田総裁は、「より円安を促すものではない」と表明したが、黒田総裁の会見を受けて外国為替市場では円売りが強まり、ドル円相場は1ドル=130円76銭まで上昇、2002年4月以来の円安水準を更新した。
一方で、米国では、インフレ率の上昇を抑え込むために、より大幅な金融引き締め、利上げが実施されるとの見方が広がっている。ドル円金利差の拡大観測は根強く、ドル円でのドル買い圧力は当面続くと見ている。
<日米協調介入はあるか?>
鈴木俊一財務相は4月22日、イエレン米財務長官と会談した。会談では、最近のドル・円相場について議論され、日米通貨当局間で「連携」していくことを確認したと記者会見で述べた。この会談内容については、米財務省も声明で確認した。
ただ、相場の異常な動きに対応するということと、協調して介入するということには大きな距離があると理解すべきだろう。円高方向に為替介入が行われたのはアジア通貨危機が発生した1998年が最後である。当時の円相場は1ドル=135円水準だった。アジア通貨危機による日本経済や金融システムへの悪影響が懸念されるなか、急激な円安を防衛した介入だった。2002年にも134円まで円安が進んだが、その際には、介入は実施されていない。「越えてはならない」水準の議論は良くなされるが、絶対的な水準はないと理解すべきだろう。
主要7カ国(G7) や20カ国・地域(G20)内のコンセンサスは、いかなる国であっても政府が、為替市場に影響を与えることを望まず、為替レートは市場メカニズムにより決定され、それを尊重するというものである。今回の円安は、日銀が金融緩和策を継続し、米FRBは金融を引き締めるという政策の違いによる金利差の拡大が主因である。日本と米国のファンダメンタルズにある。加えて、米国がドル売り介入するとすれば、それは、インフレ抑制を目指す中で、輸入インフレ方向に為替介入することとなる。政策の矛盾と受け止められかねず、協調介入実現への動機は、極めて小さいと考えるべきだろう。