米FRBは、3月15・16両日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0.25%幅引き上げ、0.25-0.5%とすることを賛成8、反対1で決定した。利上げは2018年以来の実施となる。反対票を投じたのはブラード・セントルイス連銀総裁で、0.5ポイントの利上げを主張した。パウエル議長が以前に公表した通りとなり、安堵で胸を撫でおろした方も多いだろう。
パウエル議長はFOMC後の記者会見で、米国経済が力強い成長を継続していると述べたうえで、FRBの責務である「物価を安定させる」ため、あらゆる政策ツールを活用していく決意だと語った。FOMCとしては、消費者信頼感指数の低下が厳しくなっているなど、持続的な経済成長を継続するリスクが強まっていることは認識するものの、40年ぶりに高い水準にあるインフレ率の上昇を抑制するには、利上げが正当化されるとの考えが大勢を占めている。
2022年内は「機敏に行動する」とのスタンスを明確にし、今回の利上げを皮切りに今年は複数回の利上げが行われる可能性を示唆した。市場では、予定されている6回のFOMC会合のすべての会で、利上げを実施する可能性もささやかれる。この記者会見を受けて、金利の上昇観測は再び強まった。
また、もう一つの焦点であるFRBのバランスシート縮小へのステップについて、FOMC声明は、議論は認めたものの、今後の会合で縮小を開始するとし、具体的な言及はされなかった。5月の会合でバランスシート縮小に向けたプロセスが開始されるかどうかは、注目である。
FOMC四半期経済報告(ドット・プロット)
なお、FOMCでは、四半期経済予測を更新し、公表した。この中で金利予測分布図(ドット・プロット)では、2022年末の金利予測の中央値は1.90%と前回の予測を一段と上回った。2023年末には2.80%へ上昇することが示された。インフレ率については、これまでの予測から大幅に上方修正され、2022年は4.3%まで上昇するとの予想が示された。ただ金融引締め措置の効果から、2024年には2.3%に下がることが見込まれている。
経済成長率については2022年が2.8%と前回予測時点の4.0%から大幅に下方修正された。失業率の予想は変わらなかった。
ウクライナ侵攻による影響に関しては、FOMCは声明で、「ロシアによるウクライナ侵攻は人的・経済的に甚大な苦難を引き起こしつつある」と記したが、米国経済に及ぼす影響は現時点では不確かであるとしており、中期的には、侵攻とその関連の事柄は、物価を一段と押し上げる圧力となって、経済活動への重しとなる公算が大きいと指摘した。今後は、侵攻と戦闘の状況を踏まえながら、主に物価動向を注意して見守ることになるだろう。
市場は落ち着いた動き
2週間前のパウエル発言は、今回のFOMCにおける政策決定の予測不可能性を減じた。0.25%の利上げが言葉通り実施されたことで、金融市場は動揺することなく、取引を終えた。米国株式相場は16日、パウエル議長が米国経済の持続的な成長に肯定的であったことや、中国当局が経済成長重視の政策スタンスを鮮明にするとの期待、ロシアとウクライナの停戦協議進展の可能性を材料に、上昇して取引を終えた。ただ、筆者は、予見可能性は低下しており、今後も、インフレ圧力の顕在化、ロシア国債のデフォルト、ウクライナでの戦闘の長期化、世界経済の成長率の低下という悪材料は、出尽くしていないと考えている。是非、できるだけ保守的に投資行動を取っていただきたいと考えている。