ロシアのウクライナへの侵攻を受けて、米国・EU・日本など同盟国は、ロシアと同国の銀行に対して経済制裁を発動した。
ロシアに対しては、ロシア中央銀行が保有する国外資産を凍結する金融制裁を科した。このため、ロシアは債務返済のための資金を有するものの、それにアクセスすることはできなくなった。
また、国際銀行間通信協会(SWIFT)は3月14日、ロシアの銀行7行を送金決済網から遮断したことを確認した。SWIFTは、主要通貨での資金決済で金融機関同士を結ぶ世界最大のネットワークである。
3月16日以後にはロシア国債に関連した支払期限が到来するが、支払いが履行されない可能性が懸念される。そうなれば、ロシア国債がデフォルト(債務不履行)として扱われることとなる。ロシアの信用格付けについては格付け機関各社が引き下げており、ロシア国債のデフォルトは差し迫った状況にある。
ロシアのシルアノフ財務相は14日、今月16日に支払期限を迎える国債の利払いの用意ができていると強調した。実際に、ロシア財務省は14日、ロシア国債の利払い分として1億1720万ドル(約138億円)を15日付で支払うよう、中継銀行に指示したと発表した。しかし、前述の通り、ロシア中銀の外貨資産は凍結されていて支払いは実行されない。
本来ならば、当該ロシア国債の発行通貨である外貨で支払うべきだが、それが実行できない場合は、ルーブルで支払うとの意向をロシア中銀は示した。債権者としては、使えないルーブル受け取っても仕方がないというところだろう。交換レートが何を適用されるかも不明である。
金融市場は比較的冷淡にこの問題をとらえている。西側の銀行のロシア向けエクスポージャーは、経営を破綻させるほど集中しておらず、国際通貨基金(IMF)も、ロシアのデフォルトが「起こりそうもない事態」ではないが、世界金融危機を招く可能性は低いとの認識を示している。
債券市場の関心は15日から16日まで開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果に移っている。短期金利は0.25%の利上げを織り込んでいるが、インフレ率の上昇圧力は強く、年内の利上げ幅が拡大するとの見通しも根強い。このため、2年米国債利回りは1.80%まで上昇した。これは、今後2年間に政策金利が速いペースで2.00%近辺まで引き上げられることを織り込む水準である。
利上げの折り込み度合いが拡大していることは、長期金利にも上昇圧力となっている。また、利上げ観測は、企業の資金調達姿勢にも影響を与える。投資適格級の社債が相次いで発行されるとの見方も、米国債利回りの上昇につながって、10年米国債の利回りは一気に2.14%まで上昇した。
ウクライナ侵攻と対ロシア経済制裁によりエネルギー価格を中心に物価上昇が見込まれる中、米ドル金利が一段と上昇したことは、他の通貨の債券利回りにも影響を及ぼした。欧州債も揃って下落し、10年英国債利回りは1.61%に上昇、10年ドイツ国債利回りも0.38%まで上げた。
市場は、FOMCのあとでいったん落ち着く可能性はあるが、中期的にはインフレ率の上昇を懸念し続けるだろう。利回りの上昇はもう一段有り得るだろう。