ウクライナ情勢を巡りロシアは態度を硬化
ウクライナ情勢が一段と緊迫化している。
2月22日、プーチン・ロシア大統領は記者会見で、ウクライナを巡る西側との交渉について、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないというだけでは不十分だと述べたうえで、ウクライナの中立宣言や武装解除が必要だとの見解を示した。さらに、ロシアによるクリミア併合をウクライナが承認することも条件に加えた。これまでは、ウクライナのNATO非加盟のみを条件としていたことから、これは条件のつり上げである。
また、プーチン大統領は、2月23日のロシアの休日「祖国防衛の日」に関連した国民へのメッセージで、ウクライナ情勢を巡っては「誠実な対話の用意がある」と述べたものの、「国民の安全を守ることが何よりも最優先だ」として、ロシア軍のウクライナ国境付近への配備を進める構えは崩さなかった。ロシア側の一方的な条件のつり上げに加えて、ロシア軍のウクライナ侵攻の準備が整ったことで、外交交渉はますます困難となる見通しとなった。
インターファクス通信が23日に報じたところでは、キエフの在ウクライナ露大使館の国旗が降ろされ、同大使館は全面閉鎖され、ロシア人外交官がウクライナから退避した模様である。
ロシア大統領府は、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の指導者がウクライナ軍撃退のためプーチン大統領に支援を求めたと明らかにした。同勢力が実効支配する2地域については、ロシアが国家として承認した。ロシアは、ウクライナ東部でのウクライナ政府軍と親ロシア派武装集団との紛争解決に向けた「ミンスク合意」についても「失効した」との認識で、反故にする考えである。これを受けて、西側諸国は対ロ制裁を拡大した。欧州連合(EU)はロシア人23人に制裁を適用すると発表した。バイデン米大統領は、ロシアとドイツを結ぶガス輸送パイプライン「ノルドストリーム2」の建設業者と同社幹部に対する新たな制裁を発表した。
ウクライナ当局は23日、銀行や省庁のウェブサイトが再度サイバー攻撃を受けたことを明らかにした。ウクライナ議会は全土に非常事態宣言を発令する政府案を支持した。
ロシア・ルーブルは記録的な下落、RTS株価指数も下落
2月23日の外国為替相場では、ロシア・ルーブルが米ドルに対して下げ幅を拡大し、1米ドル=80ルーブルを超え、2020年3月につけた新型コロナウイルスのパンデミック以降の最安値78ルーブル台を更新した。テクニカルにも、更に安値を更新する展開となるだろう。ロシアのRTS株価指数は、昨年10月の高値1,891から約3分の2の水準である1,204まで下げている。引き続き厳しい展開となるだろう。
米国株式市場も、楽観的ではいられず23日は続落した。S&P500は前日比1.8%安の4,225.50、ダウ平均は同1.4%下げ33,131.76ドル、ナスダック総合指数も同2.6%安の13,037で引けた。ウクライナ問題は、簡単には収束しないであろうことから、世界的に株価への重しとなるだろう。
10年米国債利回りは、前日比0.05%上昇し1.99%を付けた。原油などエネルギー価格の一段の高騰は物価上昇圧力となり、債券利回りにも押し上げ要因となる。