昨年末から、債券市場では、インフレ抑制のために米FRBが金融引き締めに転じることへの警戒感から、債券利回りの上昇がみられた。10年米国債利回りは先週19日に一時1.902%まで上昇し、2020年1月以来の高水準を付けた。しかし週末にかけては、ウクライナを巡る米ロ関係の緊迫度が増したことから、万一の場合に備えて、リスク回避の行動が強まり、債券利回りは切り返して1.746%で取引を終えた。安全資産としての米国債に資金が流入し、国債の価格は上昇し、利回りが低下したのである。
ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相は21日、ジュネーブで会談したが、ウクライナ情勢を巡っては打開策を見いだせなかった。両国は軍事衝突を回避し協議を継続する方向では一致した。米国はロシアが求めている安全保障について今週回答する方針を示し回答は留保した。10年米国債利回りは先週19日に一時1.902%まで上昇し、2020年1月以来の高水準を付けたが、週末は急速に買い戻され1.746%で取引を終えた。長期債の上昇幅は、経済動向次第という側面もあるが、短期金利の上昇は。利回り曲線全体を押し上げる可能性が高い。昨年3月につけた利回り1.77%水準でのもみ合いを離れ、2.00%に向けて上昇すると予想する。
一方で、短期金利は、一段と利上げを織り込む動きが強まった。2年米国債は、利回りがついに1.000%に水準を切り上げた。早期利上げへの警戒感は強まっている。米短期金利先物であるフェデラルファンド金利先物市場では、先物が続落した。3月FOMCでの0.25%の利上げを完全に織り込んだ形になった。金利・債券相場は引き続き要注意である。
今週は25~26日予定で開催される連邦公開市場委員会(FOMC)が焦点である。今回のFOMCで利上げを実施する判断は下されないとの見方が大勢だが、米国の物価指標は高い水準に張り付いていることから、利上げがあっても不思議ではない。実際、先々週までのFRB高官発言はいずれもインフレ抑制に重点を置くものだった。ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁は、この状況下で金融政策を引き締めることは「理にかなっている」と発言した。また、FRBがバランスシート縮小に動くことにも言及した。デイリー・サンフランシスコ連銀総裁も、FRBは利上げを実施して需要を抑制し、滞っている供給とのバランスを取る必要があると述べた。いずれも、インフレ率抑制に重点を置く姿勢が読み取れる。ただ、このところの経済指標で、小売売上、消費者信頼感、鉱工業生産のいずれもが弱い統計を示した。今回のFOMCは、米国経済の腰の強さを確認してからという結論が妥当だろう。
2022年1月21日現在 | 2022年1月14日現在 | |
2022年3月限FF金利先物利回り | 0.210% | 0.205% |
2022年6月限FF金利先物利回り | 0.555% | 0.520% |
2022年9月限FF金利先物利回り | 0.770% | 0.725% |
2022年12月限FF金利先物利回り | 1.015% | 0.965% |
2年米国債利回り | 1.000% | 0.967% |
5年米国債利回り | 1.560% | 1.560% |
10年米国債利回り | 1.746% | 1.773% |
30年米国債利回り | 2.070% | 2.115% |