ウイズ・コロナの世界へ
新型コロナウイルスとの戦いもまる2年が過ぎようとしている。この間、新型コロナウイルスは、アルファ株、デルタ株、オミクロン株などと変異し、感染力や毒性などの性質を変化させてきた。ある変異株の感染が収束しても、また変異が起こり感染力も毒性も強い変異株が出現すれば、行動制限は強まり、経済の足を引っ張る可能性が高まる。どこまで、こうしたコロナウイルスとの闘いが続くのか、また人類の活動に影響を与えるのか先が見えない。2022年になっても、こうした不安は続く。
しかし、ワクチン接種が世界的に拡大し、免疫の獲得も進み、治療薬の開発や医療対応・処置の習熟度も上がるなど、新型コロナワクチンへの対処法が進展していることも事実である。執筆時点で、世界的に感染が急拡大しているオミクロン株についても、未知の部分が多いが、取得できるデータからは、従来の変異株より感染力が強い一方で毒性は弱いと推定されるという。2020年から、主要国の政府が大型の財政出動を実施したこともあり、行動制限がないという前提にたてば、2022年の経済成長率は大きく改善するだろう。2021年も好調だったが、ところどころ実施された行動制限などで、年初の予想よりはマイルドな成長にとどまったことは事実である。世界的に株式相場が期待を強めているのは、こうした背景がある。
一方で、再び行動制限が強まれば、再び需要が弱まり、サプライチェーンの問題も解消されず、物流は目詰まりを起こして、経済成長に足かせとなるシナリオも有り得る。欧州の一部や中国では、2021年12月に新たにロックダウン措置を講じた例がある。リスクシナリオとでもいうべきだが、2020年の悪夢のような状況が全く再来しないと断言できる人もいないだろう。
筆者は、コロナ禍前の世界に完全に戻ることは「ない」と見ている。人類の活動に制限がかからなくなる日を誰もが望むだろうが、新型コロナウイルスとの闘いの中で、人類は「ウイズ・コロナ」を前提として、新しい生活・勤務様式に馴染もうとしている。ただ、それは、ウイルスとの闘いの「敗北」を意味しない。これまでのスタイルに回帰することや、ウイルスに生活スタイルを変えられたことを「敗北」のように受け止める人も一部にはいるが、表面的に以前と同じように暮らしたとしても、周囲や環境を含めると全く同じではないことに気づき、「ウイズ・コロナ」の新しい生活様式が定着していくだろう。
他人との直接の接触は、できるだけ回避するだろうし、物理的な面会よりもリモートでの接触機会が増えるだろう。スポーツジムやレストラン・外食の利用を控えて、生活の拠点である家を中心とした活動が増え、そのための物品の購入や家庭での消費が増えるというスタイルにシフトするだろう。それは、新しい消費や仕事や娯楽のスタイルとなり、経済を回していくことになる。悲観する必要は全くない。人類にはそれを楽しむ知恵と適応力があると思う。前向きな気持ちをもって、2022年も進んでいきましょう。引き続きよろしくお願いいたします。