先週末から20日にかけて、外国為替市場で大きく売り込まれ、値を下げたトルコリラが、21日から23日にかけて買い戻された。23日には、1ドル=10.82リラ近辺まで上昇した。24日香港時間10時現在で1ドル=11.5リラ水準にある。
エルドアン・トルコ大統領は、20日に、市場での批判の対象となった金融政策を継続すると断言した上で、国民の負担を軽減するために、リラ預金金利を上回るトルコリラが下落したことによる損失を被った場合には、その損失を国家が補填するとの措置を発表した。これをきっかけに、リラには買い戻しが入り、過去最安値から急上昇した。
加えて、トルコ中央銀行は、大規模なドル売り・リラ買い介入を実施した。介入規模は 20日と21日の2日間で30億ドルに及ぶ大規模なものだったという。ただ、この2日間で、トルコ中銀の外貨準備高は、約60億ドル減少しており、市場が想定したものよりも、より大規模に介入した可能性すらある。
トルコ中央銀行が発表した政策決定会合(12月16日開催)の議事要旨によると、輸出が増加基調を強めていることから来年は経常黒字が見込まれると予想しているようである。ただ、為替安で、輸入も相当に増加する可能性があり、トルコ中央銀行の予想は信憑性に欠ける。
エルドアン・トルコ大統領は、政策金利を低下させることが、トルコのインフレ低下につながるという常識では考えられない新経済主義”を繰り返している。リラをめぐる混乱が収まるかどうかは、エルドアン政権が採用した高インフレ下での利下げ政策が、本当にインフレ率を抑えることにつながるかということになる。しかし、市場ではこれを真に受けとる人はいないだろう。むしろ外貨準備も尽きた今、トルコの政策に疑問が生じれば、再びリラ安は激しくなるだろう。自国通貨安に振れた時には、トルコの国民生活には、輸入インフレという悪夢が待ち構えている。
これからが本当の試練で、それはまだ始まったばかりと言えるのではないだろうか。