トルコリラは対ドルで最安値を更新。
トルコリラは下落に歯止めがかからず、米ドルに対して過去最安値を更新し続けた。先々週末の1ドル=13.85リラから、さらに売り込まれ、一時1ドル=16.8リラ台まで値を下げた。先週末の引けは16.4リラだった。
週明け20日になっても、トルコリラは最安値を更新し、ついに対米ドルで一時1ドル=17.60リラ台まで売り込まれた。対円でも最安値を更新しており、1リラ=6.427円まで下げた。因みに2021年年初のトルコリラは対ドルで、1ドル=7.3リラ、対円で、1リラ=14.00円だったので約半値になってしまったことになる。
為替相場でのトルコリラ危機の深刻化により、先週17日には、株式市場も大荒れの様相となった。イスタンブール株式相場の代表的指数であるボルサ100種指数は、突然値が崩れ、下落幅が前日比5%に達したことで、サーキットブレーカーが発動されて、取引は一時中断された。同日は、結局前日比8.5%安で取引を終えた。週明け20日は、やや落ち着いた動きで、17日の引けからは2.0%ほど上昇している。
インフレ率上昇の環境で、利下げに打って出たトルコ中銀
トルコ中央銀行は先週16日に、金融政策委員会を開催し、1週間物レポ金利を1.00%引き下げ14.00%とした。4カ月連続となる利下げで、今年9月以降の利下げ幅は5.00%に及ぶ。インフレ率が21%にも達する中で、インフレ見通しの悪化と通貨リラの度重なる最安値更新にもかかわらず、エルドアン大統領の意向に沿って、トルコ中銀は利下げを継続した。
エルドアン・トルコ大統領は、政策金利を低下させることが、トルコのインフレ低下につながるという常識では考えられない持論を繰り返している。先週末にも、トルコの経済団体から、とにかくリラ下落を止める対応を要求する声明が発表されたが、ネバティ財務相は、現行の政策を変える姿勢は見せず、低金利の元での“新経済主義”を説明しただけに終わった。エルドアン大統領も、18日にも演説録画で「国民生活を高金利により破壊させない」と強調しただけだった。
自国通貨安という悲しさ
リラ相場がそう容易に反発に転じる見込みは持てそうにない。市場からのエルドアン政権やトルコ中銀に対する信認は完全に失なわれているうえ、外部環境も、米FRBが金融引き締めに転じる構えを見せていることで米ドルは堅調に推移する公算が高い。通貨リラ安が長引けば、トルコ経済を疲弊させる要因となるだろう。インフレ率が低下せず、輸入インフレが続けば、エルドアン体制の維持にも影響する事態さえ想定される。自国通貨安というのは、本当に悲惨な経済状態をもたらすことを改めて心に刻んでおく必要があるだろう。