テーパリング
最近、ニュースを見ていると、金融市場に関連するニュースで、テーパリングという言葉をよく目にしませんか?
もともと、テーパリング(Tapering)とは先が細くなる様を表しますが、金融用語としては、量的緩和策である債券購入による資金供給を次第に絞っていくという意味で使われます。
米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、リーマンショックなどの経済打撃が起こった後、大規模に金融緩和を実施し、金利をゼロに低下させた他、市場から債券を購入して資金を大量に供給する量的緩和を行いました。経済の底割れを防ぐ為です。しかし、景気が回復に向かうと、今度は逆に市場から買入れる債券の購入額を徐々に減らしていきました。この購入額縮小の過程、つまり債券購入の先細りをテーパリングと呼んだのです。
昨年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、米国経済は打撃を受け、米FRBは積極的に債券を購入して資金供給をしています。しかし、米国雇用市場が緩やかに回復し、物価の上昇も統計に表れるようになり、FRBの目標である2.0%をはるかに超えました。そして、FRB高官も、テーパリングを開始するべき、すなわち債券購入を減らし始めるべきとの意見に傾いていき、11月のFOMCでは、テーパリングの開始が決定されました。そして、12月のFOMCでは、債券買い入れ取りやめの金額を2倍の月300億ドルに増やしました。端的に言えば、それだけのお金を市場に供給しなくなることになります。つまり、量的緩和と言われる資金供給を潤沢に施す政策を転換することを意味します。
FRBには、実は苦い経験があります。2013年5月にバーナンキFRB議長(当時)は、リーマンショックの傷が癒え、立ち直り始めていた米国経済の状況を見極め、債券購入額の縮小を示唆しました。これに市場は驚き、米ドル金利が上昇し、新興国市場では米国の投資資金が引き上げられるとの観測から、急激な通貨安が起こりました。この金融市場の動揺を「テーパータントラム(かんしゃく)」と呼びます。当時副議長だったパウエル現FRB議長にも、苦い記憶ではあるでしょう。当初は、これを恐れているかのように市場との対話をしていましたが、インフレ率が高い水準に達し、逆に消費需要を抑制する要因になってくるに至り、インフレを抑え込むために、金融緩和姿勢を転換することに成功したように見えます。自身の再任も勝ち取り、金融緩和姿勢の転換も上手いこと乗り切るあたり、パウエル議長はさすがだなと、思います。
さらに、12月のFOMCでは、2022年に3回の利上げ、2023年に更に2回の利上げが、示唆されるところまで来ました。テーパリングは利上げに続いていく道のりのマイルストーンです。その開始の判断は、歴史の転換点だったと、やがては言われるようになるでしょう。